医療連携 運動器疾患

八事整形医療連携会 名古屋第二赤十字病院+回復期リハ病院+クリニック 大腿骨頸部骨折における地域連携クリティカルパスへの取り組み

佐藤 公治 先生 コ・メディカルを中心とした勉強会から盤石な土台の上に地域連携パスを運用・展開

名古屋第二赤十字病院
第一整形外科部長

佐藤 公治 先生

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●―八事整形医療連携会の立ち上げに至った経緯をお聞かせください。

厚生労働省が医療資源の有効利用を目的に、医療機関完結型から地域完結型へと医療のあり方をシフトさせる方針を打ち出していることはご承知のとおりです。大腿骨頸部骨折の場合は、急性期、回復期、維持期で役割分担し、それぞれ連携した診療が行われています。

当院は、2005年に愛知県下で初めて地域医療支援病院に承認され、地域の基幹病院として急性期医療の役割を担っています。整形外科では平均在院日数が10.9日(病院全体13.6日)、年間救急車搬入患者数も635人(病院全体5,901人)と目まぐるしく患者さんの治療にあたる日々で、スムーズな連携をしていかなければ、地域医療の実現が難しい状況です。

八事整形医療連携会が発足する以前は、紹介状での連携を行っていたのですが、転院後の状況を把握できる機会がなく、患者さんの転帰も追えない状況でした。その状況では、どこの医療機関にかかっても安心で安全な医療の提供は難しいのではないかと不安に思い、地域の医療の標準化を実現するためには、診療に関わるスタッフが集まる機会が必要ではないかと考えたのです。

医師が集まる機会は多く、当院でも私が1999年に着任した当時から、「八事整形会」という地域の整形外科医の勉強会を主宰して、3カ月おきに症例検討会を実施してきました。しかし、大腿骨頸部骨折の実際の診療は、医師を含め多職種で行っていくにもかかわらず、診療に関わるスタッフで集まる機会はありませんでした。その機会を作ろうと03年1月に発足したのが「八事整形医療連携会」です。

●―連携会はどのように組織されたのでしょうか?

まずは連携会の運営の中心的役割を担う世話人会を立ち上げようと、院内外のスタッフに声をかけました。院内では、医療社会事業課長の黒木信之氏、整形外科病棟看護師長の古城敦子氏(現・地域医療連携センター相談支援室・看護師長)、リハビリテーション課長の細江浩典氏に声をかけました。連携会の事務局は黒木氏に、地域連携パス作成のケアについては古城氏が、リハビリの内容については細江氏がそれぞれ中心になっていただきました。

また、院外の世話人には、当院と頻繁に紹介・逆紹介をしている陽明 寺本クリニック院長の寺本隆先生、愛知県理学療法士会会長の鳥山喜之氏(医療法人桂名会木村病院)をはじめとして、回復期リハビリテーション病院として地域でも中心的な役割を担う施設のスタッフが世話人を務めてくれることになりました。

連携会の参加者は、当院の世話人がそれぞれの職種間で日ごろつながりのある他施設のスタッフに呼びかけてもらいました。

●―連携会では具体的にどのような活動をされているのでしょうか?

連携会は年3回、4カ月おきに開催し、その前後には世話人で集まって準備会を行っています。これまでに連携会を20回開催してきましたが、整形外科疾患に関する治療やリハビリに関するトピックから、診療報酬の話や行政の話題までさまざまなテーマを取り上げています()。また、当連携会の特徴として、毎回必ず病院紹介の時間を設けています。他施設の医療設備や療養環境などを知る機会になると参加者からは好評です。一方、発表者にとっては、病院のアピールにもなり、はりきって発表している施設もあります。

地域連携パスの作成は、世話人会でたたき台を作成し、連携会で承認を得て04年8月より運用を開始しています。連携会発足の約1年後に運用を開始しており、当連携会は地域連携パス作成を目的に立ち上げた会とは性格を異にしています。ただ当時は、地域連携パスはもちろんクリティカルパスについても知らないスタッフが多かったため、ワークショップでパス作成から始め、だんたんと理解を深めてきました。

当初は数施設で50人前後の会でしたが、今では39施設の医師、看護師、リハビリスタッフ、事務などが参加し、150人にまで増えています。

表◆八事整形医療連携会のテーマ
表◆八事整形医療連携会のテーマ
 
◆地域連携パス
◆地域連携パス


●―連携会をまとめ上げていくポイントをお聞かせください。

患者さんに接する機会の多いコ・メディカルの参加を幅広く仰いだことです。24時間交代で患者さんに接している看護師や、リハビリの中心を担うPT(理学療法士)・OT(作業療法士)、退院・転院調整を行っているMSW(メディカル・ソーシャル・ワーカー)などそれぞれの立場から出される意見はとても参考になります。

また、世話人の中で回復期を担う病医院のスタッフが運営をリードしてくださっていることです。まずは急性期病院が声かけをして、回復期のスタッフが積極的に働きかけてくれれば、真の顔の見える連携が実現できます。

●―今後の課題はありますでしょうか?

写真◆転倒予防教室パンフレット
写真◆転倒予防教室パンフレット
03年から約6年続けてきた連携会ですが、なぜ立ち上げたのかを今一度振り返ってみると、整形外科疾患の診療レベルの向上であり、それにはまず骨折をさせない予防が大事なのではないかということになり、転倒予防の取り組みを始めました。

地域連携パスのフィードバックを見ても、後に再度転倒して反対側の足を骨折する症例が数%あります。その二次予防と、一次予防として地域における転倒予防や骨粗鬆症予防の啓発ができないかと考え、06年から独自のパンフレット(写真)を作成して、市民公開講座を開催しています。また、連携会の参加スタッフに対しても、07年11月から転倒予防指導についての勉強会を開いているほか、08年からは東海地区を中心に医療従事者向けの講演会も行っています。ケアマネジャー、訪問看護師など在宅医療関係者にも関心が広まるよう活動をしていきたいです。


名古屋第二赤十字病院 木村病院
佐藤先生
黒木氏
古城氏
細江氏
田宮先生
木村先生


陽明 寺本クリニック 加藤病院
寺本先生
寺本(真)先生
水谷氏
安達氏
松田氏
銭田氏



転載:アステラス製薬「Astellas Medical Net」